Update: 2013/8/10
作品



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11  ポトリ
 
 
2012.11.28
君の暮らす部屋 カゴの中 君が付けた鳥の名はポトリ
 
コクリ 後部座席 君は眠ってしまった
眠ったままの君を抱えて そっとソファーに置きかけた時 君が目を覚ます
ギラリ 何か思いついた いたずらっ子の瞳
ふわり 膝の上君が座ってくる
スルリ 君が毛布の中 もぐり込んでくる
ママ 抱っこ
膝までの丈の小さな体
ピタリ 君と体を寄せて眠る
君のあたたかみを感じて眠る
ペコリ 君が舌を出す 菓子店の赤いジャンバースカートの女の子のように
右斜め上 その幼い仕種を何度も見たくて
何度でも見たくて 君にせがんだ
ゆるり 君は少しずつ伸びていけばいい
違うこと出来ないことが責められても
クルリ 向きを変えて 君は君のまま伸びていけばいい
君が求めてくる たった十数年の幼い日々を
ただ君と一緒にいることが自分の全部だった頃
 
ふらり 君から便りが届く みんなで会おう
30年経ったけど 12歳だった あのクラスのみんなで会おう
 
ポトリ 君の後ろ 背中に落とされたハンカチ
引き受け手のない役をまわした
グルリ 一巡してまわってきたハンカチ
お前は 一人 そこで 裸で踊ってろ
ジワリ 君を追いつめる ズシリ 君に持たせた重い関係
弱さを更に傷めつけることに理由なんてない
 
バサリ 君が断った関係 君が一人借りた部屋
ポカリ 君が不在になって 君と不通になって空いた穴
ジリリ 鳴らしてみた取られることない呼び出し音
ポツリ また一人になった僕の委縮する神経の先を見た
 
君の暮らす部屋 カゴの中 君が付けた鳥の名はポトリ
こんな小さな二羽の鳥が 
こんなにもかけがえのないものになるなんて
思ってもいなかったんだ
 
ふわり 君の手から離れた風船 風に揺れるフレアースカート
サラリ 君の伸ばしかけの長い髪
チラリ 覗き見た他人の暮らし 
こそり うかがう他人の顔色
サラリ 聞き流せもせず 受け入れることも出来ない思いを抱え込みながら
壊れかけた神経を静めて眠った
 
カラリ 晴れた朝 だけど冷たい冬の朝
君のためにミルクを温めた
薄くはった膜 甘い香り
ゴクリ 君が唇の端を白くして 
ゆっくりとミルクを飲みかけた朝
 
 




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