観に来る

出来るだけさりげなく聞いた

白い制服

ゆるめたスカーフの濃紺の結び目

ウエストで折り込んだスカート

彼女は浅く腰かけて

ソーダフロートを飲んでいる

緑色の液の中混じっていくバニラ

外とはなく　僕とはなく

彼女の視線の先

これから始まる夏の期待

あとで

そう声をかけて　僕はコンビニを出た

チームTの白シャツ　袖をこれ以上あがらないほどまくりあげてから

 

僕達は走り続けた

少年野球とシェアするグランドで

顔を上げて

どっちへ行けばいい

どうやってもらえばいい

何をすればいい

 

僕達は走り続けた

照りつける7月のグランドで

雨の河川敷グランドで

ボトルの中解けていく氷

薄められていくスポーツ飲料水

エナメルのロゴ

誰ともかぶりたくなかったスパイク

 

僕達は夏期大会に向けて取り組んできたはずだろ

僕達はずっと勝ちを目指してきただろ

僕達は3年間一緒に走ってきたじゃないか

君だけがどうして走らないんだ

君だけどうして共有出来ないんだ

本戦直前君が外される

 

ロスタイム　主審のホイッスルがグランドに響く

その最後の最後の瞬間まで君達はゴールを目指した

 

8月になれずに終わった僕達の夏

僕は最後のボールに触れることも出来ず

泣いているチームメイトを見た

ネットの向こう　誰からも見られないように泣いている彼女達を見た