Update: 2013/8/10
作品



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9  1月
 
 
2013.01.23
1月の境内で手を合わせた
家族の健康と普通の暮らし
それ以上に欲しいものなんてなかったはずなのに
2月の凍える冬 テーブルにかけた布団にそれぞれの足を突っ込んで
何でもない話に笑っていたのに
3月の波にすべてを奪い去られてからも
女の子は前を向き続けた
仮のブースから声を上げ続けた
 
新しい年になるのを待てずにいった子供達は
昼休みの教室で 放課後のコートで 静寂する通学路で追いつめられる
体罰と言えず 暴力と言えず いじめと言えず
限定された関係の中で萎縮していく
甘いと言われ 弱いと言われ 問われる子育てが母親達を追いつめていく
体罰だと言えず 暴力だと言えず いじめだと言えず
甘いと言われ 弱かったからだと言われ 孤立する母親は声もあげられない
 
貧困と言えず 孤独と言えず 恋しいと言えず 
萎えていく自分をもう一度もう一度と 立て直そうとはしてみたのに
 
学ばなかった君のせいだ
働かない君のせいだ
家庭を壊した君のせいだ
勝てないのは君のせいだ
君のミスのせいだ
能力のない君のせいだ
仕事の出来ない君のせいだ
君の甘さのせいだ 君の弱さのせいだ
問われる個が追いつめられる
1月の朝 追いつめられた個を短い活字が伝えてくる
 
1月のポストに君への賀状を投函する
君が元気でいてくれますように
君が笑顔でいてくれますように
離れていても 君が見えなくなってからも
君を強く思い続けた
 
1月の公園 傾斜30度のゆるい滑り台を
君の手を取って滑った 君のたどたどしい足元を二人見守っていた頃
 
1月の午後8時 130センチメートルの君の肩から小さな拳6つ分の高さ 
オリオンを君と観察した頃
 
1月の午後9時 君の拳一つ分移動したオリオン 君が観察ノートに記入した頃
 
 




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