オレ　かかし　冬の朝君が描いた一枚の絵

冬の田に立ち尽くす　オレ　かかし

君が書き足したふきだし　

ユキが降ってきた　きゃあ濡れる　きゃあ踏まないで

オレ　今しゃべってる　オレ　かかしです

無人の田にオレ　かかし

冬の田にカチガラス　

最後の一粒まで貪るカチガラス

ニテナイカ　オレタチニ

オレタチハ目の前の暮らしを選んだんだ

この暮らしをもう引き戻したりはしない

それが毒であろうと悪であろうとかまわないとおもった

それが仕組まれた競争であろうと　

不正があろうと勝たなきゃとおもった

勝ち続けなきゃとおもった

すでに持っているはずなのに　数は足りているはずなのに

違うのが欲しいとおもった　もっと欲しいとおもった

売れなくなってからも　もっと作って何処まででも運んで　売らなきゃっておもった

仕事はシタヘシタヘとまわしていった

オレタチハ　人材でなく労働者でもなく削減され切り捨てられるコストだ

十字に組んだ棒切れに　汚れたつなぎの作業着を着せた

白いキャップをかぶせてから　目だけを大きく描いた

オレ　かかし　何も証明できないからって

オレが何も見てないとでもおもっているのか

オレ　かかし　冬のかかしは地面に突き刺され

つなぎの作業着が冷たい風に吹かれ

今　ゆっくりとユレテイル

オレ　かかし　何も言えないからって

何も感じないわけじゃないんだ

母さんごめんなさい

オレが弱かっただけなのかな

産んでくれたのにごめんなさい

育ててくれてたのにごめんなさい

いのちが大切なことくらいわかっていた

消えてしまいたい自分といつもたたかっていたのに

オレ　かかし　オレ　かかしです

オレタチハただひとりづつの大切なかかしだったはずだ

この小さな命とひきかえにこの田を守ってください

僕の大好きな町のこの田を守ってください