Update: 2013/8/10
作品



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24  4月
 
 
2012.04.24
君が白いベンチに腰かけてから いったいどれだけの靴が
うつむく君の視線の先を通り過ぎて行っただろう
女の子は雑貨店で 母親といつまでも文具と髪留めを選んでいる
Mのマークのバーガーショップに並ぶ人々の列に途切れはない
幸せな組み合わせと名付けられた商品に付く
プラスティック玩具に子供達は夢中だ
フリースペースに大量に並べられたテーブルと椅子
その一つで僕達は4月の日曜日をやり過ごす
僕達の欲しい物を積み上げて 巨大ショッピングモールは消費される
ここには思いつくすべてがあような気がするのに
ここには思いつくあらゆるものが集められ売られているはずなのに
君はいつも疲れ果てベンチに腰かけてうつむいていた
 
入学式を待ちきれずに 桜はピークを終えるだろう
たくさんの靴に踏み付けられた
薄紅の桜は地面に降り積もり泥にまみれて踏み固められていく
4月の平日の午後 体育館に集められた保護者達はシートに並べられた
パイプ椅子に座って綴られた総会資料に目を通す
1年生の学級花壇では入学を祝って植え付けられた
パンジーとチューリップの赤や黄や紫が鮮やかだ
1年生の教室にはまだ上級生に飾られた
色紙のカラフルな輪が吊り下がっている
4月の平日の午後 体育館の窓の外 見える桜は
すっかり姿を変え 葉桜になってしまった
変わってしまった桜に 誰ももう見向きもしないとしても
4月の午後の陽射しを浴びてキラキラ光る緑の葉もまだ充分綺麗じゃないか
皆と一緒に入学したのに 
皆と同じ制服を着て祝ってもらったのに
子供達の学びの声が聞こえたろうに
給食の湯気を注ぎ分けたろうに
並べられた椅子 君の隣で座ってたんだろうに
2年生の途中から学校に来られなくなった
男の子のことなんか思い出しもしないか
学校に来れなくなった男の子に僕は関われもしなかったか
校庭の桜は毎年美しく咲いただろうに
4月の午後の日差しを浴びた葉桜だって緑が綺麗だったろうに
 
 
 
 
 




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