Update: 2013/8/10
作品



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20  6月
 
 
2012.07.01
お姉ちゃんは結婚して家を出た
弟も就職で家を出た後
老いていく両親と暮らす実家
その奥の離れ
家族からも地域からも社会からも心を離し
君が息を潜め一人暮らしている
不登校と呼ばれる歳をとうに過ぎて
 
夏服の女の子の胸は去年より少し膨らんでいるのに
あどけなさの残る14歳の男の子の声がまた1音低くなったのに
鼻の下 髭はうっすらと黒くなっているのに
通学路の田んぼには水が引かれ植え付けられた稲は
その背を伸ばしていくのに
踏み切り側の果樹園 葡萄は白い紙を被せられ袋の中成熟していくのに
 
あの園舎で出会い 男の子は母親の足元にしがみつき泣いていた
不安げに泣きじゃくる5歳の君ばかりを思い出してしまう
お姉ちゃんにくっいて遊びに来ていたショートカットの女の子
数年前の幼い日の君ばかりを思い出してしまう
 
担任のメールの嵐に一度は学校に行けたのに
数日で女の子は学校に行けなくなってしまった
 
振っても振ってもワイパーの先 前が見えない6月の雨
光の届かない物流倉庫
6月の降りしきる雨音も 庫内放送も コンベヤーのモーター音に掻き消された
物流倉庫の奥
辿り着いたF ラインのくりぬかれた唯一つの窓
静寂する田園の町 下り始めた遮断機を僕は見た
 
君だけが自分の部屋から出てこない
君が学校に行けないでいる
君は不登校と呼ばれる歳をとうに過ぎてしまった
 
6月の雨上がりの朝
sakaemati 3丁目の交差点
その先に広がるminou 連山ははっとするほど綺麗だったのに
君の暮らす町
6月の雨に洗い流された
minou 連山の緑はこんなにも綺麗なのに
 
 
 




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