Update: 2013/8/10
作品



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19  7月
 
 
2012.07.22
女の子が無防備に肌を露出し始めた夏
ショップ店員の呼び込みのかん高い声が僕を苛立たせる
 
物流倉庫の荷待ちのトラック達
エンジンと連結されコンピューター管理された車内で
上半身裸の色黒の男達が吹き出る汗を拭う
 
その物流倉庫の中 これはこの夏の節電ではなく削減だと言いきった上司の下
働く男の子は社員になれず 休めもせず
拭いても拭いても吹き出る汗を何度でも拭っていた
 
10歳の誕生日が記録的な大雨だった女の子が
高く持ち上げ結んだポニーテールを揺らしながら駆け寄ってくる
 
かゆくてかゆくて力いっぱい掻きなぐった
重度皮膚炎の女の子の全身に副腎皮質ホルモンを塗る
 
ショートパンツからまっすぐに伸びた女の子の細い足
痛んだ重度皮膚炎の肌を隠すこともなく女の子は駆け寄ってくる
 
逆上がりとクロール25M が小学生の全てだった小4の夏
水深130cmのプール 女の子は何度も溺れそうになりながら
前へと進んでいく
 
30度を越えた7月の午後 
場違いのように咲いてしまった秋のコスモスが照りつける太陽に焼かれていた
 
7月の照りつける太陽の下
生き残った春のタンポポの白い綿毛が
誰の手に取られることなく
小さな唇をすぼめ 誰かに吹かれることもなく
場違いのように存在する春のタンポポの白い綿毛が
消えろと言われ
死ねと言われ
あの小さく咲いた頃の黄色だった自分からも
地面に突っ伏した茎だった頃の自分からも遠くなった
春のタンポポの白い綿毛が
醜いと言われ
暗いと言われ
空気を読めと言われ
違うと言われ
消えろと言われ
死ねと言われ
君にも原因があると言われ
7月の地べたに張り付く場違いの春のタンポポの白い綿毛
 
 
 
 




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