Update: 2013/8/10
作品



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16  こはなちゃんT
 
 
2012.09.30
明け始めた五月の産室 君に乳を含ませた時
薄く目を開けた君と見つめ合った時
君の小さな手をそっと握った時
君のただれた皮膚に手のひらであたためてクリームを塗った
君の吃音を案じながら 君の言葉を一つ一つ拾った
ずっとここで三人暮らしていくつもりだった
君の小さな手を引いて毒から逃げた
揺れ動く思いを断ち切って君を連れて町を出た
こはなちゃん 小さな弱い君を守ることだけを考えた
 
終業時刻を過ぎてもほとんどの車が残る町工場の駐車場
柵の向こう側に咲く小さな可憐な花
道端にひっそり咲いている小さな花の赤と黄を見た
この暮らしに救いがあるとすればこの小さな花の他にないんじゃないかと
地べたに這うように咲き繁る無名の小さな花の赤と黄を見た
 
 




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